少女たちの歌声が谷間に響くブータンの家づくり(撮影:1990年5月)

 家づくりを見るのは、たとえ自分の家でなくても、ワクワクするものだ。この現場はブータンで出会った民家で、いまから30数年前にブータンの建築様式を調べに行った時に撮った写真である。
 ブータンの民家は、日本のもに比べるとかなり大きく2、3階てが一般的だ。そんなわけで、ボクもワクワクしながら現場に近寄り、建て方などを教えてもらったのでした。
 構造は木組みと土壁のハイブリッド構造できており、土壁づくりが興味深い。写真の中央でその作業が行われている。土と松の葉を混ぜたものを水で練り、型枠に入れ、棒で突いて固めている。
 作業しているのは、なんと少女たちなのだ。それには訳があり、男が力まかせに棒を突くと早く固められるが、土の中の空気が抜けないため、丈夫な壁にならない。少女の持つ力が最適なのだという。 少女たちは声をそろえて歌を唄いながら作業をしており、その響は“労働歌”“作業歌”とはまったく違う、哀愁を帯びた“民族音楽”であった。谷間にこだまする彼女たちの歌声をもういちど聴いてみたい。

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