シュルシュルと滑って便利な空中移動ケーブル(撮影:1997年4月)

 どこにでもありそうな岩山に見えた人は、中央付近に目をこらしてほしい。空中に人が浮いているのが確認できるだろう。何をしているのかって、対岸からこちら側に移動しているのだ。
 ここは中国・雲南省・福貢、ミヤンマーとの国境沿いにある山岳地帯である。世界地図を開いてもらいところであるが、怒江(サルウイン川)欄滄江(メコン川)金沙江(長江)の大河が北から南に束ねられるように接近して流れている。激流に削り取られた大地は奥深い谷を形成し、独特な景観をなしている。
 空中に浮いている人はミヤンマー側の対岸から、怒江を渡って道路のあるこちら側に来る途中なのである。一般的には橋を渡って移動するのが常識だろう。という常識はここでは通用しない。
 ここに暮らす人々は渓谷の両岸にケーブルを渡し、滑車にぶら下がって滑り降りてくる。とても便利なケーブル橋といったところか。危険じゃないのか?写真のとおり云わなくてもお分かりでしょう。
 日常生活の一部になっており、頻繁に利用者がいるようだ。ボクは好奇心まる出しで眺めていたが、誰かが渡り終わると、すぐに次の人が続いていた。
 写真の人はまだ若い女性で、おしりの下に荷物を敷いて運んでいる。シュルシュルと滑ってきて着地するときにコツがあるようだ。躊躇しているとケーブルの弛みによっては引き戻されてしまう。
 なれているだろうこの女性にしても、無事着地して安堵の笑顔をもらしていた。見ていただけのボクも同じ気持ちだった。そのうち、ボクも渡ってみたい気になったが、やめておくことにした。

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