チベット仏教の深淵さが伝わってくる極彩色の歓喜仏(撮影:1990年5月)

 ブータンはチベット仏教を信仰する国であるが、そのお寺にお参りしたことはなかった。その機会が訪れたのはガイドのちょっとしたはからいであった。
 「目的地までまだ時間があるし、近くに高名なお寺があるので、寄ってみるか」と言われた。ボクに異存はなく、ぜひにとお願いした。いきあたりばったりだったので、お寺の名前も、場所も覚えていないのが、いま思うと残念でならない。
 淡い記憶によれば、境内には五体投地の信者が数人いたような気がする。お寺に入ると薄暗く厳粛な空気が漂っていた。壁面にはたくさんの仏画が描かれている。
 「フラッシュを焚いて写真を撮ってもいいですか」と聞くと、OKだというので、撮ったのがこの写真である。肉眼ではぼんやりとした像としか認識できなかったのであるが、帰国して現像した写真をみて驚いた。
 なんと極彩色豊かな仏画であろうか。描かれているのは歓喜仏である。チベット仏教の浄土の世界に紛れ込んだら二度と出てこれない深淵さが感じられる。

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