“滅びの美”がひしひしと伝わってくる廃墟(撮影:2000年1月)

 何だこれは!車で移動中に不意にあらわれた建物。ここは中国との国境に近いベトナム北部、ラオカイ県のサパ郊外である。季節は1月、南国とはいえ山岳地帯であるためけっこう寒く、時には雪がちらつくこともある。
 近づくにつれ廃墟であることが分かった。“廃墟マニア”といわれる人たちがいるが、ボクもどちらかというと気になるタイプだ。土地の少数民族モン族の人に聞くと「フランス人が建てた教会だったが、今はうち捨てられたまま」だという。
 かつて、ベトナムを含むインドシナはフランスの植民地だった。その時代、避暑地としてサパは人気があり多くのフランス人が住んでいたようだ。教会はその名残といえる。
 そうした歴史はともかく、近づいて廃墟を見学させてもらった。石とレンガを積み重ねた構造で、かなり大きな建物である。内部の造作物はすべて朽ち果ててしまっているが、かつての繁栄ぶりが偲ばれる。
 寒風にさらされ、山中にぽつんと取り残されている姿は“滅びの美”を感じさせる。それが廃墟の魅力なのだろう。

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