メコン川の河口で“宝船”に出会った(撮影:1996年5月)

 「“宝船”川を下る」という題を付けたくなってしまう光景だ。よくもまぁー、ここまでバランスよく、これ以上は無理という限界まで詰めこんだものである。積荷はおそらく米でる。
 メコン川の最下流ベトナム・カオラインで収穫された穀物を最寄りの集積地まで運ぶ荷船だ。これほどの量になると何十トンにもなるはずであり、何かの加減で傾いてもおかしくない。だが、実に安定している。側面の壁で左右の安定をとるだけでなく、全面に配置されたカゴはざっくりと差し込んだ杭が滑り落ちるのを防ぎ、かつ全体の荷くずれを防ぐ役割を担っている。
 舳先の目玉が航路の行き先をジッとにらんでいる。これに七福神を配したら、みごとな“宝船”になるだろう。メコン川の恵みで、この流域は穀倉地域になっているに違いない。

[ Comment ]

    %d人のブロガーが「いいね」をつけました。