中国・福建省の山中でUFOに遭遇(撮影1993年3月)
荒涼とまではいかないが人気のない禿げ山の頂から、これらの建造物を見下ろしたときの第一印象はUFOだと思った。宇宙の彼方からやって来た宇宙船UFOが人目を避けて、この地を選んで休息しているに違いないと。それも1船だけでなく適度な距離を保って数船が静かに回りの風景に溶け込んで鎮座している船団。そんな、ぶっ飛んだ気持ちにさせられたのであった。
UFOといえばスティーブン・スピルバーグ監督の「未知との遭遇」を思い出すのだが、「おぉー、こんなところで休憩していたのか。船内で異星人たちがどんな暮らしをしているのか見せてもらいたい」。まさに“未知との遭遇”というわけだ。
でも、異星人であるはずがないことは百も承知していながら、そう思いたい気持ちがフツフツと沸いてくるのであった。それに、UFOというよりはもう少し近親感のある“空飛ぶ円盤”の方が似合ってるように思えたからかもしれない。禿げ山の尾根を徒歩で下りてきて、現実の世界に戻りつつ一息ついて撮った写真がこれである。
これらの建造物は客家(ハッカ)の人たちが暮らしている住居である。この旅は1993年の3月であったから、いまから、30年近く前になる。この頃、中国の辺境地に興味があり貴州省、雲南省、××自治区といった地域に出向いていたのだ。主にその地域に暮らしている少数民族の建物や暮らしぶりが知りたかった。
そうした流れの一環で、福建省に暮らす客家の人たちの住居のありようをこの目で確認したいと思ったのである。客家の居住群は「土楼」と呼ばれており、以前から興味津々であった。
厦門(アモイ)であらかじめ予約していたガイドとドライバーと落ち合い、砂煙を巻き上げって我がもの顔にぶっ飛ばすトラックが行き交う街道を、くたびれかけた小型車で内陸の龍岩市までたどり着いた。
「ここから村に入るには徒歩になります」といわれ、UFOに遭遇したというわけだ。自分としては多少調べてきた予備知識と異なる印象で戸惑いを覚えた。とはいえ、いま目にしているUFOは砦のような排他的な雰囲気ではあったが、一方では近づいていっても歓迎してくれそうな気配がうれしかった。
実際、近づいて行くにつれ土楼の存在感に圧倒されそうになったが、住んでいる人たちは物静かに迎入れてくれたのだった。その生活ぶりを知るにつけ、ボクらの“柔”な暮らしに比べると“濃い”時間が流れており、異星人といってもあながち大げさではない気がしたのであった。(“濃い”話は改めて書きたい)。
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